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魔術合戦

< 魔術合戦 >

ダイアン・フォーチュン VS 猫使い魔術師モイナ

歴史上有名な魔術合戦といわれているものにはいくつかありますが、今日のブログでは旧「黄金の夜明け団」の大魔術師であった「マクレガー・メイザース」の妻である、「モイナ・マクレガー・メイザース」と魔術師「ダイアン・フォーチュン」との魔術合戦をご紹介します。

この両者の仲がおかしくなってきたのは1921年ごろからで、もともと霊媒能力を持っていたダイアン・フォーチュンが、この時期にアストラル界(星幽界)からの通信を受け取るようになってきました。その記録が現在「コズミック・ドクトリン」と呼ばれる一連の神秘思想文書なのですが、その内容は神智学系のものであって、「黄金の夜明け」の思想と相違する点が少なくなかった。しかし、自信を得たフォーチュンはこの星幽界通信を主体とした魔術活動を追及しようと決心した。しかし「どうしてもその霊界通信を採用したいのなら、別派という形で独立なさい」というのがモイラの意向であった。フォーチュンもこれに同意して1922年に「神智学協会キリスト教神秘主義ロッジ」という組織をつくって、いちおうモイナのもとを巣立つことになった。この時点では両者の仲はまだ全面的対立というほどではなかった。

険悪な雰囲気が濃厚になりだしたのは、フォーチュンが筆を執って数々のオカルト記事を雑誌に載せだしたころからでした。たとえばフォーチュンの著作「愛と結婚の秘教哲学」が発表されると、モイナがただちに抗議する。A∴O∴の高等教義を無断で発表するとはけしからんというわけです。対するフォーチュンの返事は、教わってもいない高等教義をどうしたら無断発表できるのか、あれは自分の独創であって、それがたまたま「高等教義」と一致していたからといって責められる筋合いのものではない、というものでした。そして別の記事でフォーチュンが、最近堕落結社がカネと引き換えに名誉位階を乱発していると告発・非難したとき、彼女とモイナの対立は決定的となった。じつはモイナも位階販売業に手を染めていたからである。

猫使い魔術師モイナとの星幽界闘争

それからのことであった、どこからともなく黒猫が現れ、フォーチュンの周囲を不気味に取り巻き始めたのは・・・・。彼女の組織の本部はロンドンのベイズウォーターにあったが、その界隈の戸口という戸口、階段という階段に黒猫が座り、獣臭(じゅうしゅう)をふりまきながら、ぎゃあぎゃあと鳴きまくるのだ。

それだけではなかった。ある朝、フォーチュンが食事を終えて2階に上がろうとしたとき、階段から猫が降りてきた。それも虎の2倍はあるという巨体の怪猫が。息もできずに化け猫を見つめるフォーチュンの目の前で、当の猫はすっと消え失せてしまった。「さては思念投射か!」と悟るのに時間はかからなかった。これほどの術を使える相手がだれなのか、これも明白であった。

そのとき、「ぎゃあ!」と窓の外で獣の鳴き声が聞こえた。見下ろすと道といわず屋根といわずいたるところに黒猫が座っていて、フォーチュンめがけて牙をむき、吠えたてていた。

こういう状況下での最良の策は、すべての霊的修行を中断して住居を変え、身の回りに霊的バリアーを張りめぐらすことである。だが、もはや組織の長となったフォーチュンにそれは不可能であった。きたる春分の日には彼女は団を代表して星幽界に飛翔し、高次の魔術師たちの集会に出席しなければならない。猫を恐れて集会を欠席すれば、フォーチュンの面目は丸つぶれである。彼女は二度と、この世界で相手にされないだろう。

フォーチュン曰く:「星幽界の旅は本当に鮮明な夢であるが、選択、意志、判断の力は保たれる。私の旅はいつもは象徴的な色のカーテンで始まり、その壁を通り抜けていくのである。だが今回はカーテンを通過するとすぐに、敵が私を待っているのが見えた。・・・彼女(モイナ)は大変に華麗な自己の位階用の法衣をまとって現れ、私の道をふさぎ、自分の権威によって星幽界の道を通ることを禁ずると言った。・・・・・それから意志の格闘が始まり、私は投げ飛ばされて空中をぐるぐると回転し非常に高い所から転落するような感じを覚えた。気づいてみると自分の体に戻っていた。」

このフォーチュンの無意識状態の肉体は部屋中を跳ね回り、周囲の人を驚倒させたという。第一ラウンドでダウンを喫したフォーチュンであったが、このまま引き下がりはしなかった。勇敢な彼女は再び立ち上がり、星幽界闘争第二ラウンドにに臨んだ。今度は短く、しかし激しい闘いであった。フォーチュンは大魔術師モイナを押さえ込む「秘密の首領」を争いの場に引きずり出すことに成功し、事の是非を「首領」の手に委ねるという戦術をとったのであった。闘争は終わった。以後、フォーチュンはモイナから攻撃を受けることはなくなった。

その夜、床に就こうとして服を脱いだとき、彼女は背中にひどい痛みを覚えた。手鏡で調べてみると、首から腰にかけてザックリと、巨大な猫の爪にえぐられたような傷がついていた。モイナは、猫を使う術の達人として知られていたのである。

*上記の逸話は学研ムーブックス6の「魔術」より引用しましたが、国書刊行会「世界魔法大全4」の「心霊的自己防衛」ダイアン・フォーチュン著 にも詳しいです。

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