KOSEIのブログ

自分の可能性をどこまでも

中国面白体験記その4/国際詐欺

< 国際詐欺 > 2016/01/21

外国での詐欺は日本国内に比べると数も多いし、その手口も巧妙です。僕が中国に滞在していたときのお話をしましょう。

僕は以前中国で会社を経営していましたが、中国は当時は今のように中国が世界の経済に影響を与えるほど大きな存在ではなく、「日本人」というだけで中国では存在感がある時代でした。僕の立場は日本人の会社社長ですから中国人からみればやはりある特殊な存在だったのでしょう。色々な話が持ち込まれました。中には与太話もありました。今日はその「与太話」のうちの一つを・・・。

僕は会社社長とはいうものの、住居はある中国人の友人の家に居候をしていたに過ぎません。当然その家族の方とも交流があったわけですが、ある日事務所に居るとその友人がある人を伴って相談に来ました。その一緒に来た人も親戚の人なのですが、その親戚の人からの相談です。相談内容は以下のようなものです。

「第二次大戦終了直前台湾の国民党が中国共産党毛沢東との闘いに負けて台湾に逃げたのだが、その際に大金を中国大陸に置いて行った。そして、その大金は実は私のところにある。私は政府関連の人間なので極秘でそのカネを使いたいのだが(註:これ自体泥棒ですね)、米ドルで中国大陸では使えない。私たち中国人は外貨への両替は規制を受けている。そこで相談なのだが、日本人の社長さんに是非この米ドルを買い取って欲しい。特別割引価格で売却したい。日本人なら米ドルから日本円への両替は容易でしょう」といって私にサンプルとして1枚の100ドル札を渡すのです。また国民党直筆の書簡も見せられました。僕の友人のお父さんは、むかし国民党だったので、その書簡を預かって家に帰り「鑑定」してもらいましたところ、確かに本物だそうです。

その日その人は「これが実際の米ドル札です」といって私に100ドル札を2枚手渡しましたので、僕はその100米ドル札を手にとって調べました。確かに臭いも米ドル札のにおいです。見た目も透かしもあります。どのくらいの割引かは忘れましたが、かなりの割引だったので僕の心は動きました。利益としてはかなりの金額です。全体の金額もはっきりとは覚えていませんが、何百万ドルとかいう単位だったと思います(現在のレートで何億日本円)。

ここで問題は二つありました。(1)もしもその紙幣が本物であった場合:そもそもこれは台湾政府のものだのだから返還要求が来たら返すしかない。(2)もう一つ:当然のことながら、そもそもこの紙幣は本物か偽物か?・・・・、この2つです。まずは本物かどうかです。慎重を期するに越したことはありません。当時私の日本人の友人がアメリカのサンホゼで会社社長をやっていましたので「わかりました、では米ドルが本物かどうかを確かめたいので100ドル札1枚貸してもらえますか?通し番号でチェックできますから、僕のアメリカの友人にチェックしてもらいます。」と彼にいったのです。

ところが彼は拒むのです。それもかたくなに・・・。「一枚でいいんです、証文も書きますよ」とまで言ったのですが、ナゼか拒むのです。親戚伝いで来た話なのだからそれぐらいは問題ないのではないかと思ったのですが、なぜかその人は頑としてサンプル出しをしない。そもそもそこらへんから「怪しいな・・・・」と思っていたのです。しかしまあ全額を見てくれとの相手の誘いに乗って別の場所まで見にいきました(もちろん護衛はつけました・命がけです)。すると、ビッシリと100ドル札を敷き詰めた四角いケースの蓋を開けて見せられました。彼は「どうだ!」と言わんばかりの勢いです。

そこで僕との話し合いが始まりました。嘘を言ってるときの中国人の言葉の抑揚や様子には特徴があります。特に「もちろん、そうですよ」とか「当たり前じゃないですか」といったような肯定をするときの話し方や表情が、微妙ながら不自然なのです。余談ですが、これは中国人に限らず万国共通で人間というのはウソを隠すために「真実性」を強調するときは必要以上のオーバーアクション、オーバートークですね。むしろ信頼できる人の話しは地味で、むしろぼそぼそと話す人が多いです。さて何時間も話しましたが、結論から言いますと、(やはり)偽物だったのです。危なく引っかかるところでした。しかしこのような「M資金」的な話しは中国はもちろんのこと、世界中イヤというほどあります。いまひとつ、よく覚えて欲しいのは、日本人が被害にあうことがとても多いそうです。日本人はまだまだ世界を知らない、それを乗り切るには世界へ出て行くしかないのです!

さて、それにしても、この100ドル札ですが、誰が印刷したのでしょうね?よくできていました。イヤ本物なのです。本物だけど偽物なのです。というのも手仕事でこれだけの完璧な紙幣を作ることはほぼ不可能で、聞くところによると国際偽札団が存在していてそこで専門に印刷しているようです。その意味で公式な印刷機で紙幣を刷ったのだから「本物」。しかし国家認定ではないから「偽物」というややこしい構図。というのも紙幣を印刷する機械はスイスの会社が販売しているのですが、当然ながら相手が個人では販売しません。ということは国家絡みの詐欺事件ですね。恐ろしいです。お金や信用を失うところでした、下手をすれば命まで失ったかもしれません。

他にも沢山ありましたが、今日はここら辺で・・・。

KOSEI