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トート・ヘルメス・トルキメギストス

< トート・ヘルメス・トルキメギストス > 2016/01/26

『トート・ヘルメス・トルキメギストス』とは、三倍に偉大なトート・ヘルメスという意味。

『テュフォンを踏みつけるヘルメス

「テュフォンを踏みつけるヘルメス」という絵がありますが、この絵の説明をしてみましょう:これは「世界の智慧」の人格化であるヘルメスはここで、無知と堕落のために敗北した龍であるテュフォンの背中を足で踏みつけている姿で描かれている。エジプトの密儀参入者にとってテュフォンは、魂を滅ぼす者であり、個人の霊的本性を呑みこむ劣等な世界を意味している。彼は不完全であるので、高次な世界から下降して、物質的世界に再び生まれなければならない。そのためテュフォンに呑みこまれることは、再生の過程を意味し、人間は死の敵を打ち負かすことによってのみそれから解放される。ヘルメスは左手に二匹の争う蛇が巻きつく杖(ヘルメスの杖)を持ち、右手に彼の哲学の要約を浮彫りにした文字で書いた不滅のエメラルドを持っている。ヘルメスは、著名なエジプト学者ベルゾーニの発見した模様を描いた、古代「エジプト・フリーメーソン」の前掛けを着けている。二つの小さな円は、ヘルメスに最も関係の深い形と象徴を含んでいる。上の円には朱鷺(トキ)がいるが、その奇妙な特徴のため特に医術と関係づけられている。密儀参入の儀式においてエジプトの祭司は、自分がトートつまりヘルメスの属性を代表していることを示すために、朱鷺の形をした仮面をつける。下の円には、その知性と献身のために常にヘルメスと関係づけられる動物つまり犬がいる。ヘルメスの額には、蠍座の秘密の象徴であるウレウスがある。それは、龍の形をして彼の足もとに力なく横たわるものと同じ力の再生を示す。ヘルメスの胸にある神聖甲虫(スカラベ)は、彼の魂のなかにある霊的で再生する光の存在を示す。首飾りは、その円によって天体の軌道を表わす。テュフォンの尾の三つの先端は矢の形をしているが、それは世界のエネルギーの三つの破壊的な表現すなわち精神的、道徳的、物質的堕落を示す。図全体は、肉体の再生、精神の覚醒、情緒の変成を通じての勝利を意味している。

『トート・ヘルメス・トルキメギストス』の描写:

 雷が鳴り、稲妻が光り、神殿の帳が上から下まで引き裂かれた。青と金の衣服を着た高貴な導師が、ゆっくりと宝石で飾られた杖をあげ、絹の帳が裂けてあらわになった暗闇を指し、「エジプトの光を見よ!」と叫んだ。白い平織の衣服を着た志願者は、先端に蓮をつけた二本の巨大な柱に縁どられた全くの闇を見つめる。そこは前に帳が掛かっていた場所である。彼が見つめてると、輝く霞が大気に拡がり、ついには空気が輝く粒子のかたまりとなった。志願者が何か有形の物体はないかと、ちかちか光る雲をじっと見つめているとき、彼の顔は柔らかな光に照らされた。導師は再び口を開いて、「おまえが見ているこの『光』は、『密儀』の秘密の光である。それがどこから来るかを知っているのは『光の主』のみである。彼を見よ!」と言った。

  突然輝く靄(もや)のなかから、明滅する緑の光に包まれて、ひとりの人物が現われた。導師は杖を下ろし、頭を下げ、手を胸に当てて謙虚に挨拶をした。志願者は、この姿を現わした人物の栄光に半ば目が眩み、恐ろしさのあまり後退した。勇気を取り戻すと、若者は再びこの「神々しい人物」を見た。彼の前の人物は、人間よりかなり大きな体をしていた。肉体はある程度透き通っており、そのため心臓と脳が鼓動し輝いているのが見えた。志願者が見ていると、心臓は朱鷺(トキ)に、脳は輝くエメラルドに変わった。この神秘的な人物は手に、蛇の巻きつく翼のある杖を持っていた。老いた導師は杖をあげ、大声でこう叫んだ。「幸あれ、三倍に偉大なトート・ヘルメスよ。幸あれ、人間の君主よ。幸あれ、テュフォンの頭を打ち砕く者よ!」

 たちまち、もの凄い龍が身をくねらせて現われた。それは恐ろしい怪物で蛇、鰐、豚の体を合わせ持っていた。その口と鼻孔からは幾筋もの炎が吐き出され、恐ろしい音が丸天井を持つ部屋に反響した。突然ヘルメスが進んでくる龍を、蛇の巻きついた杖で打つと、それはうなり声を上げて横向きに倒れた。その間に炎はゆっくりと消えていった。ヘルメスはその足を、敗北したテュフォンの頭の上に置いた。次の瞬間、志願者が柱の方に後退りするほどの耐えがたい栄光の輝きとともに、不滅のヘルメスは緑の靄(もや)の流れを従えて、部屋を通り過ぎ無へと消え去った。

★以上アンリー・P・ホール著「古代の密儀」より引用。

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